No.1/新しい朝。
新井田 生、18歳、高校3年生。
何の刺激もない毎日に、いい加減うんざりしていた
しかし今、
かなり刺激的なことが起こっている。
ここは屋上。
オレの目の前には一人の女が立っている。
ショートヘアに少したれた目
おとなしそうな印象をうける、どこにでもいそうな
普通の女子生徒・・・
しかし普通でない空気に、つつまれている
彼女の右手に握られた
カッターナイフが、おそらくその原因だろう
そうだ・・・
あきらかに自殺をしようとしている
そんな彼女にとりあえず声をかけてみることにした。
「あの・・・なに・・してるの?」
すると彼女が小さく口を開く
「わかりきったこと・・・聞かない・・でよ・・・」
・・・ごもっともです。
危うく声に出すところだったがなんとかこらえた
「じ・・・自殺?」
また分かりきったことをきいてしまった
彼女はオレをものすごく睨みつける、そうに決まってる ・・・と、言わんばかりの鋭い目つきで。
オレはその目を見たとき、背中に冷や汗が流れたのを感じた
彼女が、本気で自殺をしようとしていることを確信する
「止めろっっ・・・止めろ、って!!」
気づいたら叫んでいた
今まで、自殺なんかするわけないと
心のどこかで思っていた
しかし彼女が本気であると感じた時
急に怖くなり
今とめないと取り返しのつかないことになる気がした
「飛び降りとリストカット・・・どっちのほうが・・・」
慌てるオレを尻目に
彼女がつぶやいた
どっちがって・・・飛び降りよりはリストカットのほうが・・・
バッ・・・なことじゃなくて・・・!
なんか言わないと
なんか言わないと
なんでもいいからっ・・・声っ・・出せってオレ!!
「・・・リストカットは?・・・」
「あっ・・・えっ?」
・・・・・・何言ってんだ・・・
・・・何言ってんだオレェェエ!!?
「うそうそうそっっ・・・冗談ッ!・・・今の、ナシでッ!!・・・・」
そのとき彼女がカッターを握り締め
震えながら自分の手首を切ろうとした
「ちょっ・・・まって!」
「・・・ちがっぅ!!」
あれっ?
もしかして・・・これオレのせいかぁぁああ!!?
オイッ・・・とめろっ!!
体動けっって!!
バシッ
「あっ・・・ちょっと・・やめてってば!!」
「はなっ・・してっ!・・・」
ズッ
「あっ・・・」
プシ―ッ
「・・・」
「・・・血?」
どうやら、あやまって切れたらしい、そこからは止めどなく血が溢れている。
「オイッ・・血がぁ!」
「・・・アレッ?・・・オレの手から?」
切れたのはオレの方だった。
どうしよう、これ・・・とまんね・・・
こうゆうとき、どうすんだっけ?
止血・・・なんかで腕しばんだよな・・・なんかってなんだよ?
オレ何も持ってねって・・・・・・
あっ・・・そうだ、あの娘どうなった、あれっ?・・・いない、逃げた?
これでオレ死んだらあの娘、殺人犯じゃん・・・まぁ、そんなこと
どうでも・・・・いいか・・・・・・
オレは、自分でも不思議なくらい
落ち着いて、鮮血の流れ出る自分の腕を見つめていた
「キャァアアッ」
遠くの方から悲鳴が聞こえる
でも、オレにはもう何も聞こえないし、何もみえない。
プツンッ
・・・・・・・・・・・・・・!?
消えたはずの命の灯が、はっきりと映し出す、
目の前に、漆黒の球体を
オレはこれから、死を超えた、絶望を知ることになる。
戻る。